安部公房といえば、芥川賞をとった「壁」、世界的に有名な「砂の女」が有名ですが、もっと面白い作品があります。
せっかくの秋の夜長。
これを読んでみたらどうでしょうか。
これは短編集で 「R 62号の発明・鉛の卵」という文庫本です。
12編の短編が収められています。
正直いうと、どの話も1回目に読んだ時にはあまり理解できませんでした。
軽いSF感覚で読んでも構わないのですが、それでは何も残らずもったいない。
阿部公房だから、なにか社会的なメッセージがるのだろうなと考えて読むとかなり難解な話ばかりなのです。
2回目に読むぐらいから話の筋がだんだん見えてきます。
ただそこは安部公房の作品なので、どのような解釈をしても、正解であり、間違いなのかもしれません。
話の内容はどれも、陳腐化していません。むしろ、これからの近未来、世界中のどこかではありえそうな、そんな話ばかりです。
これから発生するであろう世界中が抱える問題等に対してシュールに描いている、そういったテーマが多いです。
でもこれが書かれたのって、もう半世紀も前のことなのですよね。
そんなに昔から半世紀あとでも、これからありえなくもないことをモチーフにしてくるあたり、本当にタイムマシンでも持っていたのではないでしょうかと思わずにはいられません。
一読するだけではちょっと難しいショートショートやSFととらえてもいいけれど、
人間の存在意義とは何なのか、
人間社会とは何なのか、
世界とはなんなのか、
すべての生態系の中で人間はどういう存在なのか等
そして何より、ひとつの評価軸だけではなく、ある一人の人間の評価に対しても、見方によって大きく変わる。そういったものが、瑞々しくと言うより、もう生々しく描かれている。
そういう作品が多いです。
それと、安部公房の作品を読んでいくと人間が持つ価値観というものは一体何なのか?という疑問が湧いてきます。
よく価値観の押し付けという言葉に出くわすけれども、そもそも押し付けるって思ってること自体が価値観を押し付けてるんじゃないのか?等と頭の中がぐるぐる捻じ曲がる感覚にも陥ります。その価値観の尺度は何をベースにしている?という単純なものではなく、何から形成されているのだろうか。
また、物語にメッセージ性は強いのだけれども、それを押し付けるわけでもない。
でもなにか考えさせられる何かは示している。でも、それらは一見、突飛な思想であり、何を言っているの?と思った直後から、そうも考えなくもないな。というようなことの繰り返し。非現実的だと思ったはずなのに、そういう場面では一番現実的なのかもしれんと脳内で置き換えて考えてしまう。
もちろん、それの受け取り方は読む人次第ですけどね。
シュールレアリズムといわれていますが、まさにそのことなのでしょう。
どれもおすすめだけれど、こんな感じでしょうか。
△でも面白いです。相対的に付けたってだけです。
でも読むたびに読後感が代わるのも阿部公房の作品。
本当に絵画みたいな小説です。
- R62号の発明 ◎
- パニック △
- 犬 ○
- 変形の記録
- 死んだ娘が歌った ◎
- 盲腸 ◎
- 棒 ◎
- 人肉食用反対陳情団と三人の紳士達 △
- 鍵 ○
- 耳の値段 △
- 鏡と呼子 ○
- 鉛の卵 ◎
ちょっと考えながら本を読める秋の夜長にぜひおすすめです。
R62号の発明・鉛の卵
飢餓同盟
もう少しだけ軽めで独特なワールドを求めるなら。
それともまずは有名なところから入る?
砂の女
壁
最後に、寝る前のスマホ習慣を読書(特に紙の本)に切り替えると、睡眠も深く、翌朝クリアな目覚めも期待できますよ!